2020年シーズンを振り返りながらQBジャレッド・ゴフがライオンズにトレードされた理由を考えていく連載のWeek5。5試合目の相手は人権問題の煽りを受けてチーム名の変更を余儀なくされ、暫定のチーム名で戦うワシントン・フットボール・チーム。前の試合までチームを率いていた2019年ドラフト1巡目(全体15位)指名のQBドウェイン・ハスキンズが早くも先発の座から下され、前年パンサーズでまずまずの活躍をしたカイル・アレンが代わりのQBを務めるワシントンホームでの一戦を振り返ります。
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試合結果
ラムズは1Q7:29にRBダレル・ヘンダーソンのTDランで先制するもキックのトライフォーポイントに失敗。直後にワシントンのカイル・アレンが自らエンドゾーンまで運んで逆転する。その後ゴフからWRロバート・ウッズへのロングパスでTDを奪い逆転に成功すると、次の攻撃シリーズでゴフが自らラッシングTDを決めて点差を広げる。ワシントンは前半終了間際にKダスティン・ホプキンスのFGを決め20対10で前半を折り返す。後半は終始ラムズペースで、Kサミュエル・スローマンによるFGとダレル・ヘンダーソンへのTDパスで30対10として試合終了。ラムズは地区2位をキープし、対するワシントンは1勝ながら地区同率2位となっています。
試合全体の感想
攻守共に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたこの試合で気になったのはこちら。
- 大暴れのアーロン・ドナルド
- 反撃の芽を摘むラムジーの危険なプレイ
- アレックス・スミスのカムバック
大暴れのアーロン・ドナルド
Embed from Getty Imagesこの試合ワシントンのタッチダウンとフィールドゴールを1つずつに抑えたディフェンス陣ですが、その中でも一際活躍していたのがDTアーロン・ドナルド。この日はなんと4度のサックを決め、23ヤードのロスを稼いでいます。このうち1つのサックはダブルチームを掻い潜って決めているのも特筆すべきポイントですね。
またLBトロイ・リーダーも3つのサックを決め、この日はチーム合計で8つもサックを挙げています。ワシントンオフェンスに対して圧倒的なディフェンス力で仕事をさせなかった1日でした。
反撃の芽を摘むラムジーの危険なプレイ
2Q残り2:21で3rd&1ワシントンの攻撃で、LBマイカ・カイザー、DTアーロン・ドナルドの猛攻をかわしたカイル・アレンがスクランブルで1stダウンを獲得しようとしたこの場面。すんでのところでCBジャレン・ラムジーがアレンにタックルをして止めますが、これがヘルメットヒットとなり結果的に1stダウン獲得。しかしアレンはこのプレイで腕を負傷し途中交代となってしまいます。2Q終了まで2分ということで両者必死だったこともあり、ラムジーもわざとではなかったと思いますが危険なプレイには変わりありませんし、交代となってしまったアレンはやはりかわいそうでしたね。特にこの試合はアレンにとってワシントンでの初めての先発だったこともあり、試合後半に向けて調子とリズムを上げていく中での負傷でしたからね。交代せずに後半もプレイできていれば試合展開はわかりませんでした。ただ交代理由が脳震盪などではなく腕の負傷だったので、次の試合には元気に出場できたのが不幸中の幸いだったと言えます。
アレックス・スミスのカムバック
Embed from Getty Imagesラムズの話題ではありませんが、2020年シーズンのNFL全体のハイライトとして挙げられる瞬間がこの試合にありました。それはワシントンのQBアレックス・スミスのカムバック。2018年11月に右脚の複雑骨折などで一時は選手生命どころか生命の危機に瀕していたスミスですが、この試合カイル・アレンの負傷により急遽フィールドに帰ってきました。この試合でTDを記録することはできませんでしたが、完全復帰をアピールし、のちの試合でアレンがシーズン終了の怪我を負ってからは先発として勝利を収め、なんとポストシーズンまで駒を進める働きをします。残念ながら2020シーズンをもって引退をしてしまいましたが、彼の奇跡的なカムバックには多くの人が勇気をもらいました。
今週のゴフ
成功/試投 | 成功率 | ヤード | 平均 | TD | INT | 被サック | レイティング | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ゴフ | 21/30 | 70% | 309 | 10.3 | 2 | 1 | 1-9 | 111.7 |
アレン | 9/13 | 69.2% | 74 | 5.7 | 0 | 0 | 2-10 | 83.5 |
スミス | 9/17 | 52.9% | 37 | 2.2 | 0 | 0 | 6-31 | 58.7 |
Week5のゴフについてフォーカスした点はこちら。
- 同じフォーメーションからのロングパスTD
- ヘンダーソンへのTDパスから見るモバイルQB待望論
- もったいないインターセプト
同じフォーメーションからのロングパスTD
2Q最初のプレイで右サイドにロバートウッズ、クーパー・カップ、タイラー・ヒグビー、反対側にはヴァン・ジェファーソン、HBにダレル・ヘンダーソンを配置したこの場面。ウッズがインモーションで逆サイドに走ってパスを受けるプレイですが、実は初期配置からインモーションまでは直前のプレイとほぼ同じで、違うのはHBがマルコム・ブラウンからダレルヘンダーソンに変わったという点でした。これについてはブラウンよりもパスキャッチに秀でるヘンダーソンに代わったことで同じフォーメーションでもパスの選択肢を増やして相手に迷いを与える効果があったと思います。また最初のプレイではパスターゲットの素振りを見せたカップがこのプレイではパスプロテクションに入るなどしっかり布石を打っていたのもポイントですね。
直前のプレイの時にゾーンディフェンスの穴を見つけたのか、もとからこの同じ体型のプレイの連続が戦術として組み込まれていたのかはわかりませんが、同じ体型から同じターゲットにパスを投げるという意外性と、逆転となる56ヤードのロングパスをピンポイントでしっかり投げたゴフの腕は素晴らしかったです。
ヘンダーソンへのTDパスから見るモバイルQB待望論
4Q残り6:42で2nd&9の場面、相手ディフェンスの腕をすり抜けた絶妙なパスをRBダレル・ヘンダーソンがギリギリのところでキャッチしてタッチダウン。2019年にRBトッド・ガーリーの負担軽減のためにドラフトされたこともあり、パスキャッチもこなす器用な面がようやく板についてきました。
ここで用いたのは片側に3人のWRを配置し、もう一方にTEを配置するWR3 TE1のトレイ体型というフォーメーションですね。左サイドにロバート・ウッズ、クーパーカップ、ジョシュ・レイノルズというラムズのレシーバートップ3を置き、反対側にはキャッチも得意なTEタイラー・ヒグビーを配置することで、普通に考えればWRトリオのコンビネーションでTDパスを狙いそうだがコンタクトに強いヒグビーで押し切る、あるいはまだ2ndダウンなのでショートパスで手堅く進めるという選択肢も考えられる場面でのヘンダーソンへのパスというプレイで見事タッチダウンを奪いました。さらにセットしてから素早くスナップを行うことでディフェンスに考える隙を与えないというのもポイントでした。WRもTEもRBも誰もがパスターゲットとなり得る、本当の意味で誰がターゲットになるかわからないアーミーナイフ的な戦術こそショーン・マクベイHCがやりたい自由なオフェンスだと思うので、前年怪我で出場できなかったヘンダーソンが戦力として計算できるようになってきたこのタイミングでしっかり決められたのは大きな収穫だったと思います。
そういった意味では、本当はQBも走れる方がマクベイHCにとって真に理想的なオフェンスとなり得ると考えられます。この状況でスクランブルができればディフェンスもお手上げですからね。マシュー・スタッフォードをゴフの代わりにトレードで獲得しましたが、もしテキサンズのQBデショーン・ワトソンがトレード可能だった場合はなりふり構わず獲得に動いたのではないでしょうか。マクベイHC本人も学生時代はモバイルQBだったこともあり、動けるQBでのオフェンスの構想はしっかり隠し持っていることでしょう。
もったいないインターセプト
この日ゴフはパス成功率70%で309ヤード(平均10.3)を稼ぎ、2TDパスを決めてレイティング111.7を記録するなど素晴らしいパフォーマンスを披露しました。しかしながら2Q3rd&7残り55秒で追加点が欲しいゴフはプレッシャーがかかった状態からクーパー・カップにパスを投じますがCBケンドール・フラーにインターセプトされてしまいます。ここでFGを決めれば16点差になるので後半だいぶ楽になるというのはわかりますが、このターンオーバーによって逆に相手にFGを決められてしまいました。幸いこの試合では大きな問題にはなりませんでしたが、インターセプトの増加はゴフの低迷の要因の一つにもなったと言えるので、せめて余裕がある時は冷静なプレイをしてほしいですね。
まとめ
全体を通して素晴らしいプレイを見せてくれたゴフのWeek5のまとめはこちらです。
- レイティング111.7の素晴らしい活躍
- チームの理想からするとモバイルQBが求められている?
- 点差に余裕がある時くらいはインターセプトを減らしたい
次回はWeek6サンフランシスコ・49ers戦です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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