2020年シーズンを振り返りながらQBジャレッド・ゴフがライオンズにトレードされた理由を考えていく連載のWeek6。6試合目の相手はNFC西地区で同じ西海岸に本拠地を置くライバル、サンフランシスコ・49ers。QBのジミー・ガロポロを含め怪我人に悩まされがちなチームという印象ですが、この試合では両チームほぼフルメンバーでの戦いとなり、真の実力が試されるかたちとなりました。そんな万全の状態のライバル49ersのホームに乗り込んだ試合を振り返ります。
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試合結果
ラムズは前半から49ersのQBジミー・ガロポロに2つのTDパスを決められる苦しいスタートを切ります。一方ラムズもQBジャレッド・ゴフからWRロバート・ウッズへの絶妙なTDパスを通して反撃の狼煙を上げますが、直後のシリーズで再度ガロポロにTDパスを決められ、6対21で前半を折り返します。
一転して後半49ersはタッチダウンを奪えず、得点はFGによる3点のみ。ラムズはFGとWRジョシュ・レイノルズへの40ヤードTDパスで追い上げを図るも時間を上手く使うガロポロをとらえることができず試合終了。ラムズは2敗目を喫し、翌日4勝目をあげたカーディナルスと地区同率2位で5戦全勝のシーホークスを追うかたちに。勝った49ersは3勝3敗となりNFC西地区は混戦模様となった週でした。
試合全体の感想
地区ライバル対決に負けてしまった今週の気になった点はこちら。
- 宿敵のジミーG
- ガロポロのペースで進んだ試合
- 散々だったオフェンスで光ったヘンダーソン
宿敵のジミーG
Embed from Getty ImagesジミーGことジミー・ガロポロが49ersに移籍した2017年後半以降、このカードの対戦成績はこの試合まで49ersが3勝2敗と勝ち越していましたが、負けた試合はいずれもガロポロが怪我で欠場した時のもの。つまりラムズはガロポロ相手に勝利したことがないということです。結局この試合もガロポロにレイティング124.3の活躍を見せられ敗北し、ラムズはガロポロ相手に4戦全敗と苦渋を舐めさせられています。
ガロポロはポケットパサーではありますがパスは多投せず、ラン主体で攻撃を組み立てながらところどころでショート〜ミドルパスを投げてリズムを作るような選手ですね。ラン比重が高いことやロングパスの精度が低いことなどから過小評価されることがしばしばありますが、フルシーズンを戦った2019年はロンバルディトロフィまであと一歩というところまで駒を進めるなど健康であればチームを勝利に導く力を持っているので、やはり能力的には優秀なQBだと言えるでしょう。そんなガロポロ率いる49ersはドラフト1巡目でQBトレイ・ランスを獲得しています。ガロポロの契約は2022年まで残っているものの、保証金は2020年で終了しており、いつリリースされてもおかしくない状況なので2021年はガロポロにとって試練の年となります。
ガロポロのペースで進んだ試合
この日もガロポロはパス33回に対してラン37回とラン比重の高いオフェンスを展開しました。ラッシングで122ヤードは平均くらいの数字ですが、2020年シーズンで最高のディフェンスチームとして君臨したラムズのランでの平均損失ヤードは91.3ヤード。ラムズにしてはランを許したかたちですが、平均は3.3ヤードなので”許した”というよりはオフェンスが不甲斐ないばかりに49ersに何度も攻撃権を与えてしまったことが原因とも言えますかね。実際に49ersの攻撃時間は37分55秒と63%を占めています。一方でガロポロがパスで獲得した268ヤード(平均8.1)はだいたい平均以上。ランでもパスでもガロポロにやられてしまったかたちでした。ただ後半は逃げ切りを意識しすぎたのか、FGによる3点のみと失速。しかしラムズにも後半逆転する時間はなく、逃げ切られてしまいました。
散々だったオフェンスで光ったヘンダーソン
Embed from Getty Images16点という得点からもいかにオフェンスが苦戦したかがわかりますが、一人気を吐いたのがRBダレル・ヘンダーソン。ラン88ヤードは両チームトップで、キャリー14回で平均は6.3と素晴らしい活躍でしたが、この試合を境に徐々に数字を落としていきます。逆にこの年のドラフト2巡目RBキャム・エイカーズがギアを上げていき、最終的にはヘンダーソンが624ヤード、エイカーズが625ヤードとわずか1ヤード差でチームのリードラッシャーの座を奪われてしまいます。エイカーズはプレイオフの2試合でも大車輪の活躍を見せ、すっかりチームの顔として定着。影を潜めたヘンダーソンですが、エイカーズが21年シーズン開幕直前にアキレス腱断裂の大怪我でシーズン終了となってしまったことで一躍チームのナンバー1RBへと繰り上がりました。ベテランのマルコム・ブラウンもチームを去った今、ヘンダーソンの後ろには実績ほぼ0のエグゼイビアー・ジョーンズとスペシャルチームでの実績しかないレイモンド・カライス、そしてドラフト7巡目の新人ジェイク・ファンクとなっており、かなり不安なバックス陣となっています。21年は文字通り馬車馬の如く働くことになることが予想されるため、20年前半のような働きを期待したいですね。
今週のゴフ
成功/試投 | 成功率 | ヤード | 平均 | TD | INT | 被サック | レイティング | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ゴフ | 19/38 | 50% | 198 | 5.2 | 2 | 1 | 0 | 72 |
ガロポロ | 23/33 | 69.7% | 268 | 8.1 | 3 | 0 | 0 | 124.3 |
Week6のゴフについてフォーカスした点はこちら。
- 過去最低レベルのパス成功率50%、そしてインターセプト
- 低調なプレイの中で希望が見えるTDパス
- ゴフとガロポロ、どっちがすごい?
過去最低レベルのパス成功率50%、そしてインターセプト
この日のゴフのパス成功率は50%と2017年以降最悪の数字。ロングパスどころかミドルパスもろくに通らず、パス平均も5.2ヤードでこの年を通してワーストの記録となりました。ただ全てがゴフの責任かというとそうではなさそうで、レシーバーも徹底マークされ、カバーを振り切ることができずなかなかフリーになれませんでした。
とはいえこの日のゴフのバッドスロー(質の悪いパス)は10本で20年シーズン最低の27%を記録してしまったことからも、やはりゴフの責任は大きかったと言わざるを得ないパフォーマンスでした。特に3Q残り約2:39で12点を追う場面。タッチダウンまで残り2ヤードで4thダウンギャンブルの賭けに出たゴフでしたが、WRジョシュ・レイノルズへのパスを49ersのCBジェイソン・ベレットにインターセプトされてしまいます。4thダウンなのでいずれにせよパスが通らなければターンオーバーになってしまう場面ということで難しいところへ果敢にパスを投げ込んだのだと思いますが、やはりここは決めて欲しかったですし、ここで決められるかどうかが接戦をものにできるかどうかの違いなんじゃないかと思いました。(まあ直前のWRクーパー・カップへのパスはカップがしっかりキャッチしていたらTDだったのでこれもゴフだけのせいかと言われると難しいですが…)
低調なプレイの中で希望が見えるTDパス
この試合でゴフが挙げた2本のTDパスはどちらも素晴らしかったですが、2Q残り9:08、3rd&10の場面で投げた1本目は特に素晴らしいパスでした。WRロバート・ウッズが49ersのSジャキスキー・タートにぴたっとマークされながらもボールに飛びつき見事にキャッチ。あと数センチずれていたらディフェンスに弾かれていたかキャッチできない、絶妙なところへのパスでした。加えて2プレイ前にヘンダーソンのラッシングTDが決まったかと思いきやペナルティで10ヤード罰退になったあとですからね。逆境での悪い流れを断ち切るような素晴らしいプレイでしたが、それを試合全体で見せられなかったのは残念でした。
ゴフとガロポロ、どっちがすごい?
NFC西地区で同じ西海岸をホームとするラムズと49ersのQB二人は2018年、19年にそれぞれスーパーボウルに駒を進め、いずれも敗退しています。また両チームともオフェンスシステムが評価されており、チームの勝利はそのシステムによるものでQBは誰が務めても問題はない、というようなことまで言われることも。とまぁあまり良くない共通点が挙げられますが、個人的にはどちらのQBも傑出した能力を持っていると思っています。
じゃあ同じ地区のライバルとしてどちらが良いQBなのか?と考えてしまいますが、結論から言えばゴフの方が優れたQBだと思っています。正直チームを勝利に導く能力で言えばガロポロの方が優れているんじゃないかと思いますが、この二人の決定的な違いはやはり健康面、タフネスです。ガロポロは49ersでスターティングQBとなった2017年のweek13以降、この試合までにレギュラーシーズン43試合中16試合を欠場しています。また2020年も後半戦の8試合含む10試合を怪我で欠場するなど、健康面では不安定と言わざるを得ません。一方ゴフは新人としてデビューした2016年week11以降この試合まで怪我で欠場したことはなく、唯一の欠場は2017年にプレーオフ進出が決まっていた最終戦に戦力を温存するためのものでした。仮にガロポロがシーズンを通して健康な状態を維持できれば、正直ゴフよりもチームとして良い成績を残せるんじゃないでしょうか(現に2019年はそうでしたし)。しかしどんなに能力が高くても試合に出場できなければ元も子もないですし、特に怪我で悩まされることが多いNFLという世界において長く健康状態を維持できるのはゴフの一つの才能だと言えるでしょう。49ersが大きな対価を払って得たドラフト全体3位という指名権でトレイ・ランスを獲得したことからも、やはり怪我で計算しにくい選手は使いづらいということの裏返しですしね。不毛な議論かもしれませんが、個人的には健康で計算できる方がやっぱり良いと思っています。
まとめ
絶妙なTDパスを見せつつも全体的に低調だったゴフのWeek6のまとめはこちら。
- パス成功率50%など思うようなプレイができなかった
- 素晴らしいTDパスはあったが全体的に低調で大事な場面でのインターセプトが勝負を分けた
- タフネスは大きな武器と言える
次回はWeek7シカゴ・ベアーズ戦です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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