試合結果
ラムズvsバッカニアーズのディビジョナルラウンドは最後まで目が離せない試合となりました。
ラムズはKマット・ゲイのFGで先制すると、TEケンダル・ブラントン、WRクーパー・カップのTDレシーブなどパス主体で効率よく得点を重ねて前半だけで20点を奪います。一方バッカニアーズはFBの3点のみで後半へ。
3Qに入ってもラムズのQBマシュー・スタッフォードが自ら持ち込んでTD。27対3と24点差をつけて勝負ありかと思いきや、カップが今季初のファンブルを喫すると流れが変わります。RBレナード・フォーネットが反撃の口火を切るTDランを決めると、QBトム・ブレイディからWRマイク・エバンスへのTDパスで27対20と1ポゼッション差に迫ります。ラムズは残り3:20、ランで時間を潰そうとしますがRBキャム・エイカーズがこの日2回目のファンブルロスを犯してしまうと、最後はフォーネットがエンドゾーンまで持っていき、残り時間42秒で27対27の同点となります。このまま延長戦か…と誰もが思ったラムズのラストドライブ。ラムズ自陣25ヤードでQBマシュー・スタッフォードがサックを受け、最後のタイムアウトを使ったのが残り時間35秒。その後ショットガンからWRクーパー・カップへ20ヤードのパスを通してきっちりカップがフィールドの外に出て時計を止めると、スタッフォードはプレッシャーを受けながらもカップへの44ヤードのロングパスを決めます。
残り時間4秒、最後は昨年途中からラムズに加入し、抜群の安定感を誇るKマット・ゲイがFGを決めて見事サヨナラ勝利を飾りました!ゲイは2019年にバッカニアーズにドラフトで指名されますが、わずか1年でカットされました。2年連続スーパーボウル優勝を狙ったバッカニアーズを”蹴落とした”のが戦力外を受けた選手というのも、またおもしろい巡り合わせでしたね。
先制したことがすべて
この試合の勝因は先制できたことが全てだったように思います。バッカニアーズとしてはリードをしつつ、追いかけるのが苦手なラムズオフェンスを焦らせてスタッフォードのインターセプトを誘うというのが狙いだったんじゃないでしょうか。
元々バッカニアーズはレギュラーシーズンでパス731回(リーグ1位)に対してラン385回(同31位)でパス66%ラン34%と、超パス偏重型オフェンスでした。ちなみにラムもパスが多いチームですが、パス607回(同10位)に対してラン420回(同23位)で比率はパス59%ラン41%となっています。
ただこの試合でQBトム・ブレイディの頼りになるターゲットはWRマイク・エバンスとTEロブ・グロンコウスキーくらいで、カードが少なかった。そのため復帰したRBレナード・フォーネットのラン主体(とまでは言わずとも、半々くらいとか)で先制し、ロースコアでもラムズのミスを誘って勝ちきろうという算段だったんじゃないかと思います。
バッカニアーズは開始早々フォーネットのランで押しており、現に最初だけはランが通じていました。確かにラムズディフェンスのイメージは、毎試合見ていてもあまり強くない印象があります。おそらく49ersにボコボコにやられているのでそういう印象があるんだと思いますが、数字を見返してみればラムズが今季許したラン1回あたりの喪失ヤードは4ヤードでリーグ5位タイ。ディフェンシブバック(DB)が5人となるニッケルを多く採用しており、ランにはそこまで強くなさそうに思えますが(DBが多いとランストップのためのLB、DLが減るため)、実はそこまで走られていないんですね。
この試合も最初こそランで出鼻を挫かれましたが、すぐに立て直すとオフェンスが順調に得点を重ねました。点差が開くにつれバッカニアーズは余裕がなくなってきますから、追い上げるためにどうしてもいつもと同じようにパス偏重になってきます。ブレイディがキャリア初のアンスポーツマンライク・コンダクトを取られたのが余裕を失っていた証拠ですね。
ですがそこはブレイディ、後半の追い上げはさすがGOAT(グレイテスト・オブ・オール・タイム)でしたが、ブレイディをもってしても最大24点差では同点までが精一杯。バッカニアーズが先制できず、スタッフォードがのびのびプレーできたことが全てだったように思います。
やっぱり最後はスタッフォード&カップ
Embed from Getty Images成功/試投 | 成功率 | ヤード | 平均 | TD | INT | 被サック | レイティング | BadTh | Drops | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
M.スタッフォード | 28/38 | 73.7% | 366 | 9.6 | 2 | 0 | 2-11 | 121.2 | 5 | 1 |
T.ブレイディ | 30/54 | 55.6% | 308 | 6.1 | 1 | 1 | 3-21 | 72.2 | 11 | 4 |
そしてこの試合はなんといってもラストドライブに尽きます。プレーオフに入ってWRオデル・ベッカムJr.の存在感が増していますが、スタッフォードとWRクーパー・カップのホットラインは今季のラムズを象徴する存在ですし、やはり最後に頼りになるのはカップでした。
ラスト2プレーのうち最初の20ヤードのキャッチをした場面では、カップがバッカニアーズのCBショーン・マーフィー・バンティングを振り切ってフリーになったのも素晴らしいですが、ランアフターキャッチでフィールド外に出て時計を止めたのがカップのガッツと粘り強さという最大の武器を表していて見事でした。
カップはこの日2Qに取った70ヤードTDレシーブを含むキャッチ9回で183ヤード、平均20.3ヤードも獲得しています。パッカーズのQBアーロン・ロジャースがMVP候補だとも言われていますが、初のWRのMVPをカップに進呈してもいいんじゃないでしょうか?
控え選手が活躍!
Embed from Getty Imagesこの試合は控え選手の活躍が目立ちました。
まずはSジョーダン・フラーの代わりにプレーオフで先発を務めるSニック・スコット。FSのテイラー・ラップと合わせて先発2人の欠場が続いており、プレーオフは絶望的でしたがこのスコットが大ハマり。この試合ではターゲット3回に対して許したパスは1回13ヤード、そしてインターセプトを1つ決めており、レイティングは驚異の8.3を記録しています。またPFFによるグレードはこの試合91.5とチームで2番目の数値を記録。またプレーオフでの2試合を合わせると89.9で、出場チームのディフェンス選手の中で4位に位置しています(1位のLBボン・ミラーに関してはもはや言うまでもないくらい活躍してますしね…)
続いてはLTジョセフ・ノートブーム。LTアンドリュー・ウィットワースの代役として出場し、許したプレッシャーは1つ、QBヒットは0に抑えるなど素晴らしい活躍をしました。
PFFグレードも71.4とまずまずの評価。来シーズンはLTアンドリュー・ウィットワースの去就が明確ではありませんが、ウィットワースも40歳を迎え、シーズン終盤は欠場することも多くなってきたことも考えるとFAになるノートブームを引き止めるという選択肢が強いかなという印象です。
そして最後はTEケンダル・ブラントン。スナップは8回(11%)でしたが、キャリア初のタッチダウンレシーブを決めました。ラムズにはTEタイラー・ヒグビーがいるため3年目のブラントンは出場機会があまりありませんが、ブロックが得意なのでこのTDレシーブは意表をついたプレーとなりました。
今週も魅せたスタッフォードの美技
このブラントンのTDレシーブの時、スタッフォードはノールックでパスを投げていました。このノールックがどこまで効果があったかはわかりませんが…笑
ブラントンのブロックをフェイクに使うデザインされたプレーでチームを勢いづける追加点を奪いました。
次戦49ers戦に勝利するために…
Embed from Getty Images次戦はカンファレンス・チャンピオンシップ。これに勝てば2018年以来のスーパーボウル出場です。しかも開催地はホームのSoFiスタジアム!絶対に負けられません。
そして対戦相手は宿敵49ersです。ラムズはショーン・マクベイをヘッドコーチに据えてから、49ers率いるカイル・シャナハンとの対戦成績を3勝7敗、さらに対ジミー・ガロポロには6戦全敗と最悪の相手です。
そんな天敵49ersに勝利する条件、それは…
前半を20対0で折り返すことだ!!!!!
バッカニアーズには27対3まで引き離したにも関わらず同点まで追い上げられましたね。これには短い時間で追い上げることに成功したブレイディの勝負強さとパス精度の高さは不可欠でした。ガロポロも良いQBですが、ブレイディほどパスに秀でてはいないので20点差つければ勝てるでしょう!!!
というのは冗談で(でも割と今の勢いなら無くはないかも)、ラムズが勝利するために必要なのは大きく3つかなと思います。
- ターンオーバーをなくす
- 効率よくランを出す
- 先制する
ターンオーバーをなくす
この試合ラムズは4つのターンオーバーを起こしたことがバッカニアーズの追い上げに繋がったというか、それがなければここまで接戦にはならなかったわけですが、レギュラーシーズンではこのターンオーバーはスタッフォードのインターセプトによる比率が高かった。
ラムズはレギュラーシーズンで計23回(リーグ18位)のターンオーバーを許しています。これはインターセプト(INT)とファンブルロスを足した数字ですが、スタッフォードのINT17回はジャガーズのQBトレバー・ローレンスと並んでリーグワースト。一方でファンブルロスはチーム全体で5回しか許しておらず、カーディナルスに次いでリーグ2位の好成績を収めています。
つまりレギュラーシーズンでは攻守が交代してしまう重大な問題であるターンオーバーの7割以上をスタッフォードのインターセプトで招いてしまっていたことになりますが、バッカニアーズ戦ではほとんどファンブルを起こさないオフェンス陣がミスを連発してしまったんですね。
また今季2敗した49ers戦でのターンオーバーはいずれも2回ずつターンオーバーを取られており、そのうち1つがオーバータイムでのサヨナラINTでした。
サックよりも深刻なターンオーバーを減らすことは必要不可欠です。
効率よくランを出す
ラムズはパスゲーム、49ersはランゲームを得意とし、次戦でもどちらがそれぞれのやりたいことができるかという見られ方がありますが、個人的にはラムズが49ersのお株を奪うほどランが出るかどうかというのは注目ポイントだと思います。バッカニアーズ相手にはRBキャム・エイカーズがラン24回で48ヤード(平均2ヤード)と、ランが完全に封じられてしまいました。それでもパスがうまく通ったので良かったのですが、49ers戦ではラン・パスをバランス良く通してマトを絞らせないことが重要ではないでしょうか。
先制する
最後はやはり先制できるかどうかが重要です。レギュラーシーズンで前半リードされてからの逆転勝利はWeek5シーホークス戦、Week17レイブンズ戦の2試合のみ。追いかける展開だと焦りからかINTが出やすいため、なるべくリードして(できれば20点差以上で…笑)前半を折り返すことが必要です。
これに勝てばスーパーボウル!因縁の49ers相手に見事勝利できるか。とても楽しみですね!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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